「そこの人っ!!」
「へ?」
「うぐぅ! そこの人、どいてー!」
 祐一は声のした方を見たが、特に変わったことはなかった。変わったことはなかった……というより誰もいない。
 祐一は中国拳法の用いる「猫足立ち」のかまえをとっていた。もちろん祐一は拳法を習ったわけではないが、四肢の力を抜きどの方向からのの攻撃にもスピードとリズムを失わぬ防御体勢を本能的にとり――自然と「猫足立ち」の型になったのである。
「……? 祐一!」
 周囲を警戒する祐一のもとへ、名雪が走り寄ってきた。
「名雪……、俺がお前を放ってどこかに行くのを止めに来たようだが……俺は今、どこかに行くどころか1歩も動けん」
「どういう意味……?」
「動くな! 名雪! 危険だ……このあたりに何かが潜んでいる」
「え? 私にはなんにも見えないよ……」
 その瞬間!

『ザッ』

 祐一と名雪が音のした方を見ると、そこには雪の上にくっきりと新しい足跡が・・・!
「あ……足跡がひとつだけ!」
「跳躍したんだ! 空中から攻撃してくるぞ!」
 そして空から舞い降りてきたのは……
「き……きさまは!? きさまは、まだこの街に! ……ワグゥ!」
「ギャアアアアア!」
 ワグゥと呼ばれた少女……「羽」の流派の使い手・月宮あゆの一撃は名雪の左腕を引きちぎり、そのまま名雪の体を近くのファーストフードショップへと引きずり込んだ。
「名雪!」
 ワグゥの跳躍からここまで、たったの2秒――すでに「猫足立ち」のかまえで防御体勢をとっていた祐一だけがかろうじて身をかわせた。それも、立つ位置があと1センチ名雪よりであったならば祐一も同時になぎ倒されていたであろう。
「名雪! なんてことだ、今のはワグゥだ! ワグゥとアウーズ(殺村凶子)がそろってこの商店街にいるのかッ!?」
 そのとき、ファーストフードショップの扉が開き、中から再びワグゥがあらわれた。
「祐一クン……そう、成長したんだってね。マイディシ様を倒したんだって? 相当に修行をつみ成長したとみえる……いいだろう! まずこのワグゥに殺される資格はあるッ!」


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