明王伝レイ 特別編


日記新シリーズ
絶望の世界形式というかパクリというか、そんな感じで明王伝。
マジ日記と思われるといろいろマズイので、一応注意。フィクションです。



2月1日

制服が土で汚れていた。家で「どうしたの」と聞かれたので「別に」と答えた。
本当は、アイツに足払いでこかされてついた。でも言わなかった。
夕方、おじさんがやってきた。ボクはうれしかったけど、家のみんなは嫌な顔をしていた。特におじいちゃんは大声でなにか怒っていた。
ボクはおじさんにあわせてもらえなくて悲しかった。おじさんはすぐに帰った。
おじさんは、本を1冊おいていった。おもしろそうなので読んでみたかったが、お父さんとお母さんが読ませてくれなかった。
お風呂にいくとき、お母さんがおじさんがおいていった本をかくしているところを見た。今度読んでみようと思った。



2月2日

学校を休んだ。お母さんがおじいちゃんの見えないところにおいておいた本をこっそり読むために。
それに、学校に行っても別に楽しくないから。お金をとられたりするわけじゃないけど、けられたりするから。
でも、ボクが学校を休んだのは本を読むためだからこれは登校拒否じゃない。
分厚い本だったから、きっと読むのに時間がかかる。だから休んだ。
なんだかあやしいタイトルのその本は、想像どおりあやしい本だった。なんだよ、金星人って。
愛は無敵らしい。キレイゴトを言うな。
いじめはいじめられるやつから「いじめられたいオーラ」が出てるらしい。そんなのは強い者の理屈だ。
少し腹が立ったが、分厚い割に読みやすい本だった。夕方におじいちゃんが帰ってくるまでに全部読んでしまった。



2月3日

学校に行った。蹴られて痛かった。
家に帰ったらおじいちゃんは自分の部屋にこもっていたので、こっそり昨日の本を読み直してみた。
「いじめられたいオーラ」を消すには自信を持てばいいらしい。無理。
敵を愛すればいいらしい。試しにあいつらの顔を思い浮かべてみた。無理。
別の部分に、こんなことも書いてあった。他の人の中に素晴らしいものを発見すれば、それは愛を与えたということらしい。
あいつらのどこに素晴らしいものがあるんだ。ないものは見つけられない。無理。
そこまで読んだところでお母さんが仕事から帰ってきたので、本をもとの所にかくした。



2月4日

今日は学校がないのでずっと寝ていた。
ちょっと起きて、マンガ読んだりゲームしたりした。



2月5日

今日も蹴られたので、愛してみようと思って試してみた。
他の人の中に素晴らしいものを発見すればいいらしいので、こいつらにもいいところがあるかもしれないと考えてみた。
街中でおばあさんの荷物を持ってあげているあいつを想像してみた。
朝早くから街のゴミ拾いをしているあいつを想像してみた。
あいつらもいい奴のような気がしてきたので、にっこり笑いかけた。
そしたら、あいつらは変な顔をしてどこかへ行ってしまった。
本当に愛は無敵だったらしい。
ボクは「与える愛」の力を身につけた。



2月6日

昨日ボクの愛の前に逃げ出したあいつらが今日もまた蹴ってきた。
ボクはまた愛を与えた。
でも、今日はきかなかった。よけい蹴られた。
愛が足りなかったのかもしれない。
学校の帰り、本屋であの本と同じやつを見つけたので立ち読みしてきた。
これで、明日こそバッチリだ。



2月7日

強い「念い」、これで“おもい”と読むらしいが、これは強くもてば本当のことになるらしい。念力ってやつだろうか。
今日の授業中はずっとあいつの頭をねじ切るところをイメージしていたが、なにも起こらなかった。
どうやら念じかたが弱かったらしい。明日また挑戦してみよう。



2月8日

今日も授業中ずっと念力を練習したができなかった。
訓練が必要だと思ったので、家に帰ってからもずっと練習していた。
そしたら、ベランダの柵の1本がへし折れた。
すごいぞ、ボク。



2月9日

蹴られたので、ボクの念力でやりかえしてやった。
腕がグチャグチャに曲がっていたが、ボクは警察につかまったりしない。
だって、ボクは指1本も触れていないんだから。
でも、みんなボクがやったことには気付いてくれた。みんなのボクを見る目が違う。尊敬されてる。
強さは愛だ。



2月10日

第2土曜日なので学校は休み。せっかく尊敬されてるのに。
学校へ行ってみたが、誰もいなかったので帰ってきて寝た。



2月11日

家にヘンな人が来た。なんとか心霊コンサルタントの人だという。
2人いたので、サングラスをかけた方の人を少し念力でからかってやったらもう1人が突然怒りだした。
好き勝手に念力を使っているとどうのこうのと言うが、聞く気なんてない。そしたら、あきらめたのか帰っていった。
帰り際にサングラスじゃない方の人が脅しをかけてきた。「お前が魔に変われば、俺はお前を討つ」だそうだ。
できるもんならやってみろ。



2月12日

学校が楽しい。授業中に先生にいたずらしてやったりすると、これも楽しい。念力だから怒られない。
それに、先生もボクの力を知ってるみたいだ。ボクを尊敬のまなざしで見つめている。
夜、ついさっき、仙人みたいな人たちがやってきた。「誰だ」と聞くと「仙人」と答えた。ボクの予想は正しかったらしい。
その人は、ボクの中にある力をすべて引き出すために修行しなくてはいけないといったが、ボクはめんどうなのでいやだった。
ボクが断ると、仙人は悲しそうに帰っていった。そういえばあいつ、ボクのことをヘンな名前で呼んでたな。
エンリルだったっけ。



2月13日

こないだのコンサルタントの若い方のヤツと道端で会った。イヤなヤツの方だ。
難しいことを言うので無視していると、実力行使に出た。大人のクセに。
アイツも念力が使えたようだけど、ボクにはかなわなかた。吹き飛ばしてやったら動かなくなったので、放って置いて家に帰った。
ボクは最強だ。



2月14日

また、昨日のアイツが家まで来た。生きてたのか。
ボクに向き合うと、ヤツはおかしな呪文をとなえはじめた。
「わが業はわが為すにあらず……天地を貫ぬきて生くる明王神の権能なり!!」
そういうと、ヤツは6本腕の化け物に変身した。
ボクは少し驚いたが、念力があるのだから変身もあるだろうし、鏡の中の世界だってあるかもしれない。
霊視というのだろうか。こないだの仙人といい最近ヘンなモノも見えるのだが、それでヤツを見ていたおかげでコツはつかんだ。
ボクも変身してみることにした。
「わが業はわが為すにあらず……天地を貫ぬきて生くる祖神の権能なり!!」
……それからしばらくの記憶はない。気が付くと、ボクもヤツも人間の姿だった。
ヤツは目を大きく開いてボクをみつめていた。変身したボクが無意識のまま格の違いをみせつけたってところかな。
うっとうしいので家から追い払った。
夜、また仙人が来た。「覚神おめでとうございます」だそうだ。なんのことかよくわからない。
仙人はボクにいろいろな話を聞かせた。
人の魂が死後に向かう世界が存在すること、その世界には何段階かの階層があること、人の魂は何度も転生すること。
そして、上の階層に住む魂たちは地球の発展を目指していること、彼らも時には地上に転生すること、彼らにも多少の考え方の違いはあること。
現在はアモールという人の意見で、人間は霊的なものと少しあいだを置いて付き合うようになっている。これは悪い霊に誘惑されないためらしい。
しかし、仙人たちの考えは違うという。気にくわない者を放り出しての発展はおかしい、悪い霊とも付き合うべきだと。
そしてそのためには、人間にも悪い霊に負けないだけの強い霊能力がいると。
もともと仙人たちは、霊能力をひたすらに追い求めたために霊界の裏側に追いやられた人たちらしい。
そして、ボクもその世界に住んでいた1人だというのだ。
この話を聞くうちに、ボクの中に使命感のようなものがわいてきた。
そうだ。悪霊に負けない人間をつくるのだ。ボクはそのために地上に生まれ出たのだ。



2月15日

人間に悪霊に憑かれないだけの耐性をつけ、地獄をなくし、善悪が共に住める空間を創る。
まず第1に、悪霊に憑かれない人間を育てることが必要だ。
いま地球を導いている高級霊たちのやり方はまどろっこしい。
徐々に宗教的なものの見かたを広め、徐々に人間に霊的真実を教えるのだという。
そんなことではだめだ。一時的に悪霊に憑依される人間が多くなり地獄が拡大するとしても、今すぐにでも人間に霊能力を与えねば。
ボクには目に見える奇跡、念力がある。宗教の1つも起こせば、いくらでも信者は集まるだろう。
……ボク? ボクは……誰だった?



2月16日

霊や霊能者と長く接触していれば、霊能力が目覚めることがある。私は手始めに、そこいらに霊門を開いた。
門は地獄への通用門“暗黒門”となり、悪想念が溢れ出した。人々の心が天国より地獄に近い証拠だ。
この悪霊との接触で、人間に霊能力をさずける。まずは小さな範囲内の人間だけでいい。
悪霊に憑かれて苦しんでいるところを、私が助ける。これを繰り返し、霊力が強くなるころには私を拝むようになる。
私を頂点とした、霊力の高さで決まるピラミッド。
地球を主に指導している高位霊たちの霊界のピラミッド。私は、それと同じことをこの三次元物質界で行なう。



2月17日

昨日と今日で、既に50人以上の除霊を行なった。
そうすると、どこから嗅ぎつけてきたのか現世利益に執着する人間がやってきた。
ボクを教祖に祭り上げ、宗教をつくろうと言い出す。
当然、そんなやつは相手にしなかった。金なんかに用はない。



2月18日

今日も除霊作業。ボクに心酔する者もあらわれはじめたが、霊能者なんてそう簡単に出てくるものではない。
仕方がないので、除霊ついでにボクの“気”を注入しておくことにする。多少身体のバランスは崩れるが、霊力をつけるには手っ取り早い。
明日以降が楽しみだ。



2月19日

やはり、気の注入は効果的だ。既に3人ほど、霊視程度なら行なえるようになった。
しかし、やはり副作用も発生した。確認できただけでも5人ほどが身体のバランスを狂わせて死んでしまい、その遺体は鬼臓物に変化した。
目に付いたものはすべて消したが、見つかっていないものもあるかもしれない。
例のコンサルタントの不動明王が何体か始末したようだ。なかなか使えるかもしれない。



2月20日

「これ以上お前を野放しにはできない……」
 コンサルタントの若造が来た。
「明王風情が、仙人・天狗の頂点に立つボクに敵うとでも? それ以前に……君ならわかるだろう? ボクの理想が」
「地獄をなくし、善悪が共存できる空間を創る……その理想に異論はない。だが、それはお前が善であればだ!」
「今の地球指導霊のやり方では、ただのイタチゴッコだ。いつまでも地獄はなくならない」
「だからといって、こんな大きな被害の出る方法を取っていいのか? 今の人間たちは罪を罪だと気付かずに罪を犯し続けている……。1番大切なのは、あの世とこの世の神理を教えることじゃないのか!」
「……仏法守護神たる不動明王の君なら、気付いているんじゃないか? この地に、仏陀が降臨していることに」
 そう。こいつの正体は不動明王。仏法守護神である不動がこの地上に肉を持っているということは、この地に彼が守護すべき仏陀が生まれているということだ。
「仏陀はすでに法を説いている。にも、関わらずこの世相の乱れは何だ!? 人間どもの目は開いていて開いていないも同じではないか。やつらには荒療治が必要なのだ!」
「しかし、実際に仏陀の法に従う人々も数多いではないか……お前のやり方では、善良な人々も、汚れを知らぬ幼子もまきこんでしまうんだ!」
「現世に限って見ればそうだろう……しかしその結果、最終的には彼らの魂がより高く昇華するのだ。それに……このままでは、地球意識による浄化作用の発現も近い」
 地球意識による浄化作用。それ自身が高次元惑星意識体である地球は、その身体が悪想念に包まれた時、自浄作用によって悪想念を消し去ろうとするのだ。
「近年の異常気象、自然災害……これはすべて地球の浄化作用によるものだ! にも関わらず、人間どもには地球の悲鳴が聞こえていないのだ! だから、私の取るべき道はこれしかない……仏陀に変わ……り…………私? ボク?」
 なんだろう? この違和感は……。ボクは……私?
「気付いていなかったようだな」
 なに?
「お前は、自分で思っているような高級霊、九次元心霊ではなかったんだ」
 でも、ボクは……不動明王にも……。
「そして、お前に霊力を与え、コントロールしていたのが……」
 目の前で、ヤツの姿が明王に変わる。そして、どこからか顕れた数柱の明王たちがそれぞれ複数の仙人霊を抱えている。
「貴様らだな」
 その中には、何度かボクの部屋を訪れたあの仙人もいた。
「裏5次元霊界、別名仙人界。仏陀を東洋に誕生させ、ユートピアを築く天上の計画とは別の、もう1つの裏の天上の計画……貴様らはその計画のために、高い霊格を持って生まれたこの少年の人生を誘導し、その魂を仙人的なものに変えた」
「そうだ……だからどうした? 我々の理想はその少年が語った通り……1時期・1部に苦痛があろうとも、表の天上の計画よりも早くユートピアの建造を可能とするものなのだ」
 違う。そんなのは……違う。
「あなたたちには……愛がない」
 自然と、そんな言葉が口をついて出てくる。
「なんだと?」
「あなたたちは……なぜ、自分たちが裏霊界に送り込まれたのかを考えたこともないんだ」
 力を追い求め、それを誇示しようとする仙人・天狗。神々は、そんな彼らを反省させるために裏霊界を創ったのだ。
「だまれ! 貴様などに我らの心がわかるものか――ッ!!」
「あなたたちは結局、人々に崇められたいだけなんだ。人々の幸せなんて望んでいない……天上の神々を見返すことだけが目的なんだ!」
「貴様が自分自身の口でさっき語ったことを忘れたか! 仏陀にも人々は救えていないではないか――ッ!」
「そこまでだ仙人ども!」
 不動明王の一喝で、仙人たちは静まりかえった。
「愛がなくては、どんなに正しい行いをしても人々を幸せにすることはできない。貴様らには愛がないのだ! 今も、仏陀の法を聞く人々は確かに存在する……。時間はかかっても、いずれ皆が幸せになることができるだろう。貴様ら……仏陀の手助けをするはずだった1人の人間の人生を狂わせ、天上の計画を邪魔した罪は重いぞ……!!」
「おのれ、明王どもが――ッ!!」
「五大明王出神ッ!! 破邪――ッ!」
 5柱の明王の組んだ陣から放たれる波動が、仙人たちの姿をかき消した……。
 そして明王たちの姿も消え、いつも間にか不動明王も人間の姿に戻っていた。
「ボクは……これから、どうすれば……」
「自分の道は自分で見つけるしかない。心を清く持ち……まず、自らの心にユートピアを作ることからはじめるしかないだろうな。今からでもやり直せる。闇など実在のものではないんだ。悪とは愛の不在のことであり、そもそも“悪”というものは実在しない。すべての人々の心には愛が宿っている。なぜなら、人の魂こそが愛の結晶であるからだ」
 そして、彼はボクに手をかざし、一言こういった。
「破邪……!」




裏日記 第1シリーズ
「明王伝レイ 特別編 〜裏天上の計画〜」












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